ヤップ島の石貨
デジタル証明書の「面白い利用方法」を模索する中で「地域通貨」というものに出会いました。 この文書では、学習途上ながら「地域通貨とは何か」という解説にチャレンジしました。
地域通貨のたいへん面白い特性として参加者全員を一方的な「消費者」ではなく「企業家」にもしようとするという効果があります。 本稿では、この地域通貨の特性と、最近インターネットの中で注目を集め始めている Peer to Peer 型 (P2P型と略称される)の情報システムとの関連を考察し、この観点から電子決済や電子通貨のありかたについて論じます。
また、素人の暴論ですが、「情報」という材を取引するための通貨のありかたについても言及します。 ご笑覧ください。あるいはご意見をお願いします。
SSLやを使ったWebサイトや暗号メールについて知っている人が少し増えてきましたが、まだまだデジタル証明書や電子署名が世の中に普及してきたとは言えません。
その理由はいろいろあると思いますが、「とりあえずいま面白い使い道が無い」というのが大きな理由だと思います。
実際に証明書を取った人も「証明書をもらったぞ!」と感激して、しばらく署名付きのメールをだしまくってみるのですが、だんだん飽きてきて使わなくなるというのが普通ではないかと思います。 プライバシー保護と言っても、普通の方はまだそれほど切実な問題とは感じていませんし、電子政府/電子行政への電子的な申請や電子取引などもまだこれからというところです。教育や医療といったところは少し進んでいますが、それでも今すでに使われているところは少数です。
そこで、CACAnet福岡からのデジタル証明書の利用方法を拡大する一つの提案として、デジタル証明書を使った電子通貨を作ってみようと思いつきました。
電子決済については、CACAnetが福岡市の(財)九州システム情報技術研究所(ISIT)の実験団体 FIRST だった1997年に福岡市の地銀のみなさんと実験システムを作ったことがあります。資料:当時のニューズレター
電子通貨と言っても、通常の法定通貨ではなくて、自分たちで管理できる決済専用の通貨を考えています。 その検討の中で、郵便切符や商店街の商品券のようなものと並んで地域通貨というものに検討が及びました。
しかし、地域通貨は、郵便切手や商店街の商品券の類とはだいぶ違った深い内容を持ちます。 私たちは、まだその全体像を掴んでいるわけではありませんが、その深みにはまりつつあるところです。 この勉強会では、まずその面白さをお伝えしたいと思います。
また、一方で、従来から検討してきた電子貨幣についても、地域通貨の観点から眺めると見えてくるものがあります。 後半ではこれについて説明したいと思います。
地域通貨は、法律で決められた通貨ではなく、特定のコミュニティの中でのみ通用する通貨です。
地域通貨は、世界中で利用が広まっています。日本でも多くの地域で取り組みが始まっており、メディアに取り上げられる機会も増えてきました。
理屈よりも、まず具体例を見てみましょう。
LETS (Local Exchange Trading System) は、1983年、カナダのバンクーバー島のコモックス・バレーのコートニーという小さな町で始まった地域通貨です。
この町は空軍基地と木材加工が主要産業だったのですが、1980年に空軍基地が移動したうえに、時を同じくして木材加工工場も閉鎖したために失業者が町にあふれてしまいました。
公的援助に頼った経済は、結局は地域で循環することはなく貨幣は地域から外部に流れていきました。
これは、日本の地方と同じですね。公的資金をいくら投入しても地域の産業そのものが力を失っていればお金は地域に環流せずに結局は流出してしまいます。
このような危機的な状況下で、マイケル・リントンという人が考えたのがLETSでした。
登録した会員どうしが地域通貨を使ってものやサービスを取引するシステムです。
紙幣やコインのようなものは存在せず、会員の口座の中で振替のような形で決済が行われます。
これって、「Napstar型のP2Pシステムじゃないか!」って思った方がいらっしゃると思います。 山崎もそう思いました。このことについてまた後で電子貨幣のところで触れます。
モノやサービスの価格は当事者間で決められ、お金の流れについて、事務局は全く管理しません。 お金は、取引の決済に必要な額が会員間の相互信用に基づいて発行されることになります。
1人あたりの負債の上限を「10万xxまで」とかに制限するシステムもありますが、一般には無制限で、通貨発行量は権威機関が決めるのではなくて、当事者の必要と信用によって作り出されます。
当然、負債がすごく増える人もでてきますが、それが「悲惨な状態を生まない」というのがポイントです。 LETSの「お金」には利子がありません。負債が利子によって雪だるま式に増加することが無いので、安心して負債を抱え続けていることができます。
もう一つ重要なのは、負債を「コミュニティへの依存度」と解釈することです。 自分はこのコミュニティからこれだけの恩恵を受けているという気持ちになことが大切だそうです。
でも、やはり負債は返さないといけませんから、負債をもったら、今度は自分はどういうサービスやモノが提供できるのかということを考えるようになります。
例えば、いつも介護を受けている寝たきりの老人でも、電話番やモーニングコールのような仕事で「通貨」を稼ぐことができることを知ることで、コミュニティへの参加し役立つ存在になっている感じがわくのだそうです。
LETSは、善意の輪を作るという話なので、直接的に経済効果があるとは言い難いです。 リントンさんの当初の目的とは違って、LETSは心理的な効果が大きな成果となっているようです。
このリンクにあるようにカナダ、イギリス、マウイ、タイ、南米、セネガル、コンゴ、日本、などなどとすごくいろんな国に普及しています。
消費税が高くなれば、みんなお金を使わなくなります。 これは、決済手数料でも同じで、お金をつかうときの手数料が高ければお金は動きません。
逆に、「お金をいつまでも保有していたら税金や手数料が増える」となると、爆弾ゲームのようにみんなお金をどんどん使って経済活動が活発化するという話です。
嘘のような話ですが、いくつかの成功例があります。
「エンデの遺言」河邑厚徳+グループ現代、NHK出版より無断転載
この写真は実際のスタンプ通貨です。表面はいかにも紙幣ですが、裏面はスタンプを貼る場所が52箇所あります。この写真ではよく見えませんが、この欄には、毎週水曜の日付が書いてあります。
このお金は、水曜日ごとに裏面の欄に額面の(1/50)の額のスタンプを貼らないと使えません。 スタンプ無しの状態で使おうとすると「鼻で笑われます」。
スタンプは通貨の発行元から買ってこないといけません。52週間たった紙幣は発行元に「買い取られます」。1ドル紙幣なら1ドルで買い取られることになります。
1ドルを発行した通貨発行元には、毎週(1/50)ドル分のスタンプ収入があるので、52週間たつと1ドル4セントの収入があります。この差額の4セントが管理費用として使われます。
水曜でなければ、このお金は「無料で」使えます。 でも、2週間持っていたりすると、スタンプを2枚貼らないと使えません。 つまり、手に入れたらできるだけ早く使わないといけないお金なのです。
1931年、大恐慌の影響でドイツの法定通貨のライヒスマルクは蓄蔵され環流しなくなっていました。 シュヴァーネンキルヘンというドイツの石炭鉱山の町は、その影響で鉱山を閉山させざるを得なくなっていました。
ヘベッカーという鉱山の持ち主は、鉱山を担保に4万ライヒスマルクを借り入れることができました。 しかし、これを従業員に支払うとたちまちお金が無くなることは目に見えていました。そこで、ヘベッカーはこの4万ライヒスマルクを担保に、スタンプ貨幣を発行しました。 この貨幣が「ヴェーラ」です。
ヘベッカーは、従業員にヴェーラで給与を払い、それだけでなく従業員用に日用品の店も作ってヴェーラで買い物ができるようにしました。
すると、じきに他の商店もヴェーラを扱えるようにしたいと言い出しました。 これは「必要なときには、ライヒスマルクと交換する」という約束をしたことも理由のひつとですが、なにしろ「お金」をもっているのは鉱山の従業員しかいないのですし、ヴェーラはできるだけはやく使わないといけないお金なので、ヴェーラを扱うを商品がどんどん売れるからです。 そういう形で商店から生産者へとヴェーラの流通は広がっていったそうです。
ヴェーラを持った生産者はとりあえず他に買えるものが無いので、この鉱山の石炭を購入し、 そのおかげで鉱山は石炭が売れ、大恐慌の中でこの町は完全雇用を達成したそうです。
しかし、なんということか、同年11月には、ヴェーラの使用は国によって禁止されてしまったそうです。
この時代、他にも類似の試みが多数行われました。 オーストリアのヴェルグルなどでも同様の成功したそうですが、いずれの試みもヴェーラと同じように国によって禁止されてしまったそうです。 その中で、後で説明するスイスのWIRだけは、この時代から生き残った地域通貨です。なんと60年もの実績があります。
スタンプ通貨は、大恐慌の時代には確かに成功を収めたかもしれませんが、今の日本のように、とりあえずお金はどこにでもあるという状況では、わざわざそういう通貨を使うかなって思います。
しかし近代的な地域通貨には、地域経済を活性化させるという現実的な目的に対してちゃんと成果を上げているものがあります。
ニューヨーク州イサカ市は、コーネル大学を中心にした地方学園都市です。 「イサカアワー」は、1991年に生協のスーパーから誕生した地域通貨です。 ポール・グローバーという人がはじめました。 この人の目的もグローバル経済からこの地域の経済を独立させることにありました。
イサカアワーの管理主体はNPOで、市民から選出された委員会によって運営されています。
イサカアワーは、偽造を防止するように作られた精密な紙幣です。1アワーは、10USドル相当で、この設定はこの地域の平均時給からきています。
イサカアワーは、ゴミ収集手数料、カフェ、老人ケア、アパート賃貸料、弁護士、会計処理、映画館、自動車の修理、小売店、スーパー、農産物の直販、などに使用できます。
イサカアワーは地域の産業を守る働きをしているそうです。 地元の木工職人、小規模有機農業、地元商店街などを守る働きがあるそうです。
イサカアワーで得た収入は課税対象になります。 このため、連邦政府は地方の経済の活性化効果があるイサカアワーのような補助通貨を歓迎するという結論を出しています。
イサカ市の地銀 Alternative Federal Credit Union 銀行では、アワーをローンの支払いなどに100%受け入れています。 アメリカ連邦政府が認証した銀行がイサカアワーのシステムに参加することで、信用を増す効果があったといいます。
アルゼンチンは、グローバル経済の影響で国内経済が破綻状態になり1996年には失業率が18.6%という状況になってしまいました。 そのような危機的状況の中で、市民が生き延びるために生み出したのがRGTという地域通貨です。
現時点で400システム、25万人の参加者を持つ世界最大の地域通貨です。
設立2年にして年間で1億ドルの経済効果を発揮しているそうです。
最初は手帳とカードで主催者が取引を記録するという方式だったのが、パソコンを利用するようになり、さらに小切手タイプになっていったそうです。
さらにすごいのは、様々なコミュニティへの普及に伴ってコミュニティ間での交換も必要となり、複数のコミュニティ間の取引を実現するための「結び目」というシステムが登場してきているそうです。ローカルマネーのインターネットワーキングですね。
バーゼルに本店をおくWIR銀行は、ヴェーラなどと同じ大恐慌の時代の1934年に設立された銀行です。 ベルン、ローザンヌ、ルセルヌ、サンガル、チューリッヒの5つの支店を持つ共同体銀行で、1936年以来、スイス銀行法による正式な銀行です。
当時のスイスでは、モノや労働力はあるのに通貨が供給されないために10人に一人が失業している状態でした。 このような環境の中でWIR銀行が誕生しました。
1935年には会員3000名、年間売り上げ100万フランに達し、スイス経済を救済したそうです。 現在は、スイス企業の17%がの76000社が参加。1992年の売り上げが200億フラン。
当初は、スタンプ通貨も発行していましたが、不正があいついだために廃止したそうです。
その後、1970年代までに急成長しましたが、WIRの精算システムの悪用が増えシステムを改革した。
支払いは、口座を使った資金振替で行います。 支払いを証明する書類は小切手の形を取っているそうです。
一つの取引ごとに、0.6%か1.5%の手数料を徴収します。 この手数料の違いは、そのメンバーがWIRでの取引を引き受ける義務を負うかどうかで決まります。 義務を負う場合は、30%をWIRで受け取らなければなりません。
WIR銀行は、「WIRカタログ」というちょっとおしゃれな出版物で会員リストを広報しています。
WIRが使えるお店は、クレジットカード加盟店みたいに入り口にステッカーが貼ってあります。
1995年にカードシステムが導入され、カード決済が可能になりました。 WIRではデビットカード、スイスフランではクレジットカードとして機能するそうです。
地域通貨が各地で成功しているのと対照的に、大きな資金を投入して全国各地で行われた電子マネー実験はことごとく失敗していると言って良いでしょう。
貨幣の電子化は、その本質的な意義をよく検討してみる必要があります。 ここでは、貨幣の電子化の意義と電子貨幣のあり方について検討します。
アルビン・トフラーの「第3の波」という著作に、「生費者」という概念がでてきます。 人々が一方的に受け身な「消費者」としているのではなく「企業家」として顔も持つようになるのが「生費者」です。
こういう傾向は、近頃はSOHOなどの形で確かに身近にも見受けられるようになりましたが、地域通貨はその傾向をもっと顕著に拡大する特性を持っています。
例えばLETSは、寝たきり老人を介護サービスの「消費者」にするだけでなく、電話番やモーニングコールのような仕事を見つけることで「企業家」にしてしまうシステムです。
イサカアワーも、「自分のビジネスを1ドルで広告できて気軽に始められる」というのが利用者の最大の魅力になっています。
アルゼンチンのRGTも、企業家としての自分を発見するプログラムが存在するそうです。
地域通貨が地域の活性化をもたらすのは、実はこの「みんなを企業家にする」という特性から来ていると言っていいのではないでしょうか。
最近、NapstartとかGnutellaといったPeer to Peer 型(P2Pと略されます)システムというのがインターネットの新しい情報システムとして注目を集めています。
従来のサーバ・クライアント型の情報システムは、「サーバー」と呼ばれるシステムが情報を提供し「クライアント」になる端末は情報の一方的「消費者」です。 例えば、インターネットでビジネスを始めたい人は、サーバーをレンタルするか、常時接続の回線を使って自前のサーバーを運営する必要があります。
P2P型システムでは、全ての端末がサーバーとクライアントの両方の能力を持ちます。 携帯電話でも動くP2P型システムができれば「携帯電話さえサーバーになれる」ので、レンタルサーバーなどを利用しないでも携帯電話だけでインターネットビジネスが始められるようになります。

サーバー・クライアントモデル

P2Pモデル
ちょっと強引な論理の展開ですが、地域通貨の「寝たきり老人さえ企業家になれる」という特性とP2Pシステムの「携帯電話さえサーバーになれる」という特性の類似性に注目したいと思います。
「通貨」の重要な機能は、価値を運ぶ乗り物になるということです。 たくさんのビジネスは発生すればそれの量に応じた通貨が無いと経済活動がうまく動きません。 法定通貨は、それを保有して貸し付けると利子を得ることができる「貴重品」なので、新しいビジネスがあるからと言ってすぐに通貨が調達できるとは限りません。
地域通貨は決済専用の通貨なので、保有していることには価値がありません。 LETSでは、取引の当事者が必要な量の通貨を発行していることになりますが、決済専用通貨は「貴重品」ではないので、勝手に作っても問題はありません。
勝手に通貨を作ると言っても、紙幣の場合は印刷機や紙などが必要となるので、必要になったときにすぐに簡単に作るというわけにはいきません。しかし電子的な通貨なら瞬時に作ることも可能でしょう。
素人の暴論かもしれませんが、必要なときに必要な量の通貨を供給するという観点から電子通貨について考察してみたいと思います。 以下の議論は、「眉につばをつけて」読んでください。
日本では平安時代に一時的に統一通貨を流通させましたが、平安末期の過激なインフレで通貨制度が崩壊した後、明治政府まで統一通貨の制度はできませんでした。代わりに「うちの殿様は何万石」みたいな主にお米に換算した価値基準をお金として使っていました。
素人考えですが、このやり方は、自然の恵みが作物を育て、それを加工して食品が作られ流通するという農業中心の経済の時代にはとても合理的な方法だったのではないかと思います。 米の生産を中心とした農業が基幹産業だった時代には、米を通貨にしてしまえば、GDPと通貨供給量が調和するように自動的に調整されるからです。
宇多田ヒカルが音楽を創り、その「情報」が何100万もコピーされるたびに価値が創造されていく「情報産業」の経済は、モノの経済とは本質的に違っているのでしょうか?
「情報の複製による価値の発生」は虚像のようなものに見えるかもしれませんが、それも情報の質が生み出す価値と考えると「自然の恵みによる価値の発生」の成果物である農作物とそんなに違わないのかもしれません。
しかし、もし情報がコピーされるごとに、天の恵みによって作物が生育されるのと同じように新たな価値が生まれるとすると、その価値を運ぶための通貨も同時に増加することが必要になります。
このような通貨の供給は、中央銀行による集中管理方式では迅速な対応は不可能でしょう。 こういうときにこそ「電子通貨」は必要になってくるのではないでしょうか。
LETSシステムのように、通貨発行センターが無く、取引が起こるたびに必要に応じてPeerごとに決済専用通貨が発行されるというモデルは、「ボランティアマネー」のような善意の連鎖だけでなく、「情報産業」にとっても有効なものになるかもしれません。
「米本位制」と同じように、集中的に管理しなくても自律分散的に通貨供給量が調整されるような仕組みが「情報産業」には必要なのではないでしょうか?
もちろん、現在のLETSのモデルはコミュニティへの信頼という「素朴な信用モデル」を拠り所にしていますが、WIR銀行が60年の歴史の中で経験したような試練に耐えるような「集中管理型ではない」新しい信用モデルを作る必要があるでしょう。
また、このようなシステムが本当に必要になるには、音楽産業が複製権を集中管理している現在の音楽産業のような姿ではなく、何人もの「宇多田ヒカル」個人企業家として自分の「情報」をPeerからPeerへ販売できるような世界になる必要があるでしょう。
現行の貨幣にはいくつもの機能がありますが、電子通貨にまでわざわざ現行の通貨と同じようなたくさんの機能を担わせる必要はありません。
例えば現行の通貨には「希少性」があるためにマネーゲームの対象となる「商品」になってしまっていますが、このような性質はむしろ現行通貨の弊害であると言って良いでしょう。
わざわざ高度な技術を駆使して通貨の希少性を電子通貨に再現させようという努力を行うよりも、電子通貨の決済機能の利便性を地域通貨と同じ水準にする方がずっと価値があると思います。
決済機能として普通の消費者の観点からみて重要なのは、決済するときに必要な量の通貨を簡便に得られるということと、決済手数料などのコストができるだけかからないということではないでしょうか。
デビットカードは、ただの磁気カードなので、セキュリティ的には大きな問題がありますが、利便性の面から見ると現状の決済手段の中ではとても優れています。
インターネットで使う場合は、磁気カードの代わりにデジタル証明書を振込人口座と受取人口座の認証に使うようにすると、現行よりもずっと安全な「インターネットデビットカード」を比較的簡単に作れると思います。たぶん。
以前は、クレジットカードは高額決済、デビットカードがちょっとした額の決済、電子マネーは少額決済とか言われたこともありますが、実際にはかなり高額のものまでデビットカードで決済するケースが増えているようです。
例えば家電量販店などでパソコンを買うときにはどういう決済方法をとるでしょうか? デビットカードなら現金と同じようにポイントが付きますが、クレジットカードではポイントがつきません。 パソコンのような10万円以上のものも「現金を持ち歩くよりはいいかな」という気持ちでデビットカードを利用することが増えているようです。
デビットカードの決済手数料は、消費者から見ると無料ですが、小売店からは1パーセント程度の手数料が銀行に支払われています。
いまの銀行は、金利収入が期待できない時代ですから、この決済手数料は今後の銀行の大きな「ドル箱」になるでしょう。 年間90兆円ある個人決済の何パーセントかでも食い込むことができれば、銀行は生き延びることができるでしょう。 これからの銀行は、自行内での決済機会を増やすことを重要なビジネスと考えるようになるのではないでしょうか。
地域通貨は、法定通貨よりもさらに早く循環する通貨です。決済機会は通常の貨幣よりも何倍も増えると見てよいでしょう。 したがって、決済手数料収入はかなり期待がもてます。
さらに、スタンプ通貨のような「負の利子」を取ることができれば、通貨の発行量の分だけ確実に収益をあげることができます。
このように地域通貨型の電子決済通貨を運用することはビジネスとしても成立するものになる可能性があります。 そして、このようなシステムを通貨システムとしてきちんと継続的に運用を続けていくためには、適切な形でそれを運営コストを賄えるような収益モデルを持つということもたいへん重要なことだと思います。
日本でもたくさんの地域通貨の試みが始まっています。 福岡でも博多区で「よかよか」という試みが始まっているようです。
社会的なシステム、経済的なシステムの運用には、理論だけでなく多くの経験と知恵が必要です。 まずは、既存の地域通貨の試みに参加することから始めるべきでしょう。